ちるこ(物書き用)

小説片みたいなのを書きます

「黒塗り」

そこには黒い柱が建っていた。ちょうど人一人が収まるくらいの大きさで、光沢のない黒色がその異様さを物語っている。

「これが問題のオブジェです。我々は『黒塗り』と呼んでいますが」

「黒塗り」。なるほど、まさに機密書類の塗りつぶしの類いというわけだ。さぞ趣味の悪い人間が呼び出したに違いない。

「同様のものが合わせて五つ、すべてこの近辺の市街で見つかっています。非破壊検査では一種の岩石の塊だとしか言いようがないとのことです」

そう説明する調査班の声は硬く、内心が見て取れた。誰かがただ奇妙なオブジェを置いただけ、そうであってほしい。「これに中身などなかった」と信じたい。だがもしも、万が一、「なにか」が塗りつぶされたのだとしたら――。

「どうも、案内をありがとうございました。こちら側でも調査を進めますが、新しい情報があればどうかご提供をお願いします」

「……はい。現時点で、行方不明者の報告はありません。それでは」